パン生地は捏ねるのが当たり前でした
パン工場でもベーカリーでも、商業的にパンを作る所には必ずミキサーがあります。パン屋さんにとって生地を捏ねるのは当たり前。ボウルに材料を入れてタイマーをセットしてスイッチを入れたらミキサーが捏ねてくれる。
毎日生地の状態は違うのでほったらかしにはできないのですが、私は研究室でグルグル回る生地を見ているうちに催眠術にかかることもしばしばで。。。(笑)
一方、家でパン作りをしたい人には、手も台所も汚れるし手間も時間もかかるのでこれが一番やっかいで嫌われる。
パン生地を捏ねる(こねる)目的
- 原材料を均一に混ぜる。
- 生地に空気を抱き込ませる。
- グルテンを育てる。
パンの食感は、ミキシングでほぼ決まると言って良いと思います。
捏ね方(ミキシング)はパンによって違う
ビゴ先生のテキストには繰り返し『生地のコシ』という言葉が出てきます。
どんな粉を使うのか、どんなパンにしたいのか、それらによって捏ね方もコシの強さも変える。
強力粉を使った食パン生地は、強くしっかり捏ねて肌理細かでボリュームや弾力のあるパンに仕上げる。グルテンを最大限引き出して強くしなやかな生地に育てます。
フランス粉や内麦を使った生地は、切れやすいので力を入れ過ぎないように捏ねてコシがあるけど柔らかい生地に仕上げます。ヒキが強くなり過ぎず、グルテンとデンプン双方の良いところを生かした香ばしいパンに焼き上がる。
リッチな配合の生地は、コシを付け過ぎないようにゆっくり優しく捏ね上げる。グルテンのヒキを抑えて卵の力を借り、バターとデンプンでふんわりさっくり口溶けの良い食感を生かす。
大きなベーカリーにはタイプの違うミキサーがあり、生地によって使い分けます。押して叩いて強い生地にするなら縦型ミキサー、優しくしっかりコシをつけるスパイラルミキサー、まるで人が手ですくい上げるようなダブルアームミキサーなど。
こうして書いてみるとやっぱり、ミキシングはパン作りにおいてとても重要なことだと改めて思います。
じゃあ、”捏ねないパン作り”ってどういうことだろう??
パン屋にも「捏ねないパン」があります
ミキシングが弱い、という意味では冷蔵発酵や折り込み生地が該当します。
特に折り込み生地は「圧をかけて延ばし折りたたんで寝かす」を何度も繰り返すので、初めのミキシングは原材料を均一に混ぜるくらいで十分です。
でも、家庭で作る「捏ねないパン」ってこれらとはちょっと違いますね。
家庭で作る「捏ねないパン」の秘密
捏ねないパン作りってこういうことか~!と合点がいった動画です。
焼き上がったパンの内相はまるでクロワッサンみたい!
パン・ド・ロデブよりさらに高加水(110%)の『パン・デ・クリスタル』です。
(上の動画は生地作りの部分だけ)
高加水の”たぷたぷ”生地を、
やさ~しく延ばして、
そ~っと畳んで、
休ませる。
これを何回も何回も繰り返すことでグルテンをつなげていく。
最初に書いた『捏ねる目的』の3つをボウルとトレイの中でやさ~しくやってます。
パン屋さんでは扱いやすい吸水の生地をミキサーでしっかり捏ねて短時間でグルテンをつなげるのに対し、吸水を多くし、引っ張ったり畳んだりを繰り返し、時間をかけてグルテンをつなげていく、ってことなんですね。
こういう生地は扱いにくいし時間もかかる。一日に何十種類ものパンを次から次へと作るパン屋さんではこんなことやってられません!
パン屋さんは、最短の時間でミキサーの力を借りて大量の生地を作る。
家庭では、吸水を多くして水和を上げ、捏ねるのを最小限にする代わりに時間をかけて生地を育てる方が楽。
※最近はパン屋さんでも捏ねを最小限にした高加水パンを作るところが増えました。
こねる? こねない? それはパン次第
ビゴ先生のテキストの中で私が好きなコトバ。
『いいパンはもつ』
パンは焼いた翌日に食べるとよくわかる。ちゃんと作られていないパンは、翌日には香りも風味もなくなっている。
一昔前までは「捏ね不足では美味しいパンができない」と信じられていましたけど、最近は吸水を多くして時間をかけてデンプンや酵素を生かす製法もすっかり市民権を得ました。
家庭で楽してパンを作る方法として電子レンジ発酵やイーストを多くして発酵を早めた作り方が流行ったこともありましたけど、そういうパンは翌日にはすっかり硬くなってます。こういうのはやっぱり「いいパン」では無い。
キメ細かくふわふわの食感にしたければ十分なミキシングが必要だし、水分たっぷりのモチモチパンが好きなら捏ねずに寝かしても良い。
「捏ねる」か「捏ねない」かはどんなパンを作りたいかで決めれば良いってことです。
読んでいただきありがとうございました。
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