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小麦バイタルグルテン粉末の使い方

2020年8月17日月曜日

アメリカの小麦粉 パン作り・材料

そもそもグルテンとは何ですか?? という化学的な説明はこちらがとてもわかりやすいと思います。ここでは割愛します。


バイタルグルテン粉末にもいろいろある


パン用のグルテンは、小麦バイタルグルテンとか活性グルテン粉末などと呼ばれます。

「バイタル」「活性」がついているのは、粉末処理過程で熱や化学変性を受けないで、”水を加えたら元のグルテンに戻る状態のもの”という意味。


私は一時期、仕事でいろいろな種類のバイタルグルテンを試したことがありますが、処理方法や元の小麦粉の質によって様々なタイプがありました。

弾力が強くてゴムボールみたいになるもの
柔らかくベタベタしていて餅状のもの
色が薄黒く嫌なニオイのするもの

パンに適するのは、色やニオイが少なく伸展性と粘弾性のバランスが良いもの、です。



アメリカの製パン用グルテンパウダー


アメリカのスーパーでよく見かけるグルテン粉末がこれ。
 ↓
Bob's Red Mill  Vital Wheat Gluten(活性小麦グルテン)

タンパク質含有量 75~80%



加水して捏ねた状態。
細い輪ゴムをいっぱい固めたみたいに網目状になってるのわかります?
 

上の状態のものをグっと絞るとこうなる。
網々なのに、延ばすと膜になります。
この膜になる性質でガスや水蒸気を包んでパンを膨らませます。


色も濃く無いし、伸展性と粘弾性のバランスも良く、パンに適する良いグルテンだと思います。


バイタルグルテンを添加する目的


しっかりボリュームを出して軽い食感に焼き上げたい山型食パン

粗挽き粉や雑穀、ドライフルーツなどを練り込むせいで膨らみにくくなるパン

こういうパンには力の強いグルテンが必要です。本来は最強力粉を使う方が良いのですが、手に入らない時は強力粉(ブレッドフラワー)に少量のグルテン粉末を添加することで最強力粉の代わりになります。

また、全粒粉100%やオールパーパス粉で食パンを作る時などにも、グルテンパウダーを添加すると膨らみや食感が改善します。

バイタルグルテンを添加する目的は、ちょっと足りないグルテンを補って小麦粉をパワーアップするためです。

アメリカでは(Super)High Gluten Flour、日本なら日清製粉スーパーキング日本製粉ゴールデンヨットのような最強力粉が入手できる場合はグルテン粉末を添加するより最強力粉を使った方が美味しいパンになります。

ちなみに、スーパーキングとゴールデンヨットにはそれぞれ増粘剤(アルギン酸/グァーガム)モルトが添加されています。増粘剤は、グルテンを滑らかに伸びやすくし、保水効果でパンの老化を防ぎます。

※増粘剤の効果や使い方などについてはまた別途書きます。



バイタルグルテンを入れると生地はどうなる?


  • グルテンが増えるので、生地の吸水量が増えます。
  • グルテンが多く強いので、捏ね時間が長くなります。
  • ガス保持力が上がるので、ボリュームが出ます。
  • ボリュームが出て火抜けが良くなるので、パンの食感が軽くなります。


高グルテンのパンは、焼成直後はクラストさくさくクラムふわふわですが、時間が経つと水分移行によって、クラストはヒキが強くなりクラムはパサつきが出やすいです。

グルテンの性質のせいです。

乾燥グルテン(=焼き麩)はサクサク ⇔ 加水グルテンはグミのような弾力


バイタルグルテンの使い方


小麦粉に、対粉1~3%添加します。

実際のグルテン量は75%前後なので、0.75~2.3%のグルテンが上乗せされることになります。
バイタルグルテンの製パン時の吸水率はだいたい150%くらいです。

例えば、2gのグルテンを加えたら3gの水を増量するということ。



入れ過ぎは禁物です


バイタルグルテンを添加すると生地の弾力が強くなります。たくさん入れると弾力が強すぎて生地が延びにくくなります。
※パン業界でバッキー(bucky)と呼ばれる状態

生地のとじ目が割れる、パンの底が浮く、食感のヒキが強くなる、荒々しい裂け目ができる、パンが味気なくパサつく、などの悪影響がでます。

私は特殊なパンを作るためにバイタルグルテンを15~20%入れたパンを試作したことがあります。このくらい大量に使用する場合は冒頭に書いたグルテンの特徴や品質がパンの出来にかなり影響します。

数%添加する程度であれば市販のパン用のものなら特に大きな違いは無いと思います。


薄力粉にグルテンを入れても強力粉にはなりません!


試験で薄力粉に強いグルテンを添加してみたことがありますが、何とも言えない食感のパンができました。。。

薄力粉・中力粉・強力粉は、単純にタンパク質の量が違うだけではなく、元々の小麦の質が違います。粉の粒度、グルテンの質、デンプンの質、それぞれに特徴があるので、計算上でタンパク質の量を同じにしても同じのものにはなりません。

特に薄力粉と強力粉は小麦種が異なり、含まれるグルテンの質が大きく違います。薄力粉に「パン用グルテン」を加えても強力粉にはなりません!

アメリカのオールパーパス粉はブレッドフラワーと小麦種がほぼ同じなので、オールパーパス粉にグルテンを加えてブレッドフラワーの代わりにするのは問題ないです。

その他小麦粉関連の投稿は【カテゴリー:アメリカの小麦粉】から!
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