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世界に広がる湯種製法。でも ”タンジョン(Tangzhong)”ってなんだ?

2020年8月24日月曜日

タンジョン/湯種 パン作り・材料




アメリカでも『湯種(湯ごね)パン』がブーム?


日本ではすっかり定着した『湯種』パンですが、
その後台湾や韓国にも進出し、今やアメリカでも流行っているみたい。

実はいろいろ調べてみたら、世界で知られている湯種製法と日本の湯種製法は、いつの間にか少し違うものになっていた!



日本人ならでは、の湯種製法


私のR&Dキャリアの中で何度か体験したことですが、日本人は炊き立てご飯やお餅に通ずる味や食感に非常に敏感です。

”もちもち”とした食感、デンプンから生まれる麦芽糖やオリゴ糖の”優しい甘さ”を、美味しいと感じるのは日本人だけと思います。

湯種製法は、この日本人の好きな味と食感をパンで表現できる製法です。


元祖湯種製法は日本発祥


大手製パンの湯種食パンと言えば、Pasco(敷島製パン)の『超熟』
湯種の特許もたくさん出していて、湯種製法に最も精通していると思います。

湯種がベーカリーで使われるようになった頃は、熱いお湯を使って湯種を作るのはすごく大変で手間もかかる。生地はベタベタして扱いも大変だし、パンは腰折れしやすいし、なかなか大変でした💦

それをPascoはホールセールで実現し、奥本製粉はベーカリー用湯種として冷凍製品化し、最近では「セントル・ザ・ベーカリー」が高級食パンとして売り出して銀座で行列を作りました。





台湾では湯種製法のパンの本が出版されてるらしいし、YouTubeには韓国語の湯種食パンの動画が何本もあがっています。


そして、最近はアメリカにも進出してきた!


一応確認のため調べてみましたが、やっぱり湯種製法は日本発祥で間違いないと思います。


Tangzhong?唐中?Water roux?汤种?
これ全部、湯種のこと。


韓国やアメリカのレシピには湯種パンに「Tangzhong(タンジョン)を使う」と書かれてます。タンジョンとは「湯種」の中国語読みです。

韓国のレシピにはこのタンジョンを「唐中」と書いてるものもあります。

湯種(Yudane)を英語で検索すると「Water roux(ウォータールー)」
「Water roux」を中国語にすると「汤种」

頭がこんがらがってきました?

これらは全部、各国言語の「湯種」なんです。

湯種(Yudane)
タンジョン(Tangzhong)
ウォータールー(Water roux)
汤种
唐中

ただし、全部が同じものを意味するわけではなく、、、後述しますが、湯種には2種類あり、

元祖湯種(もちもち湯種)は、「湯種」か英語表記で「Yudane」

やわらか湯種は、「タンジョン」か英語の「Water roux」

でしょうかね?

湯種の正しい作り方


湯種の作り方や配合量はレシピによっていろいろ。

日本の元祖湯種製法は、パンに使う小麦粉のうち20〜30%に熱湯を加えて餅状にしたものを一晩かけて冷まして生地に練り込む、というもの。

湯種パンが世に出た頃はこれが一般的でしたが、湯種の扱いが大変でした。そこで奥本製粉さんが冷凍湯種を開発し、パン屋さんはこれを練り込むだけで良くなった!


湯種は日本人の好きなモチモチ食感を生み出しますが、その後の研究で製パン性を悪くすることもわかってきました。


「タンジョン」はやわらか湯種


湯種について試行錯誤される中で、元祖日本の”もちもち湯種”より簡便で製パンへの悪影響も少ない”やわらか湯種”を使う方法が生まれ、その”やわらか湯種”こそがタンジョンと呼ばれているもの。(上述した湯種パン著者の台湾のYvonne Chenさんが広めた

タンジョンの作り方はページ最後にあります。

湯種の科学


公開特許などもいろいろ参照してみたところ、やはり湯種は60℃前後が最も製パンに適する処理温度だそうです。

この60℃前後で、小麦粉に以下のような化学変化が起こります。


①小麦粉内在の酵素がデンプンの一部を糖化する。
②デンプンが膨潤、一部が糊化する。
③タンパク質(グルテン)の一部が高分子化、変性する。


この化学変化によって、湯種を加えたパン生地はこのように↓なります。

①デンプンから、酵素の働きでごく少量のオリゴ糖や麦芽糖ができる。デンプンの一部が糖化することで発酵が促進し、甘味が増し、パンの保水性を高める。

マイナス面:糖の吸湿性のせいで生地がべたつきやすくなる。パンの焼き色が濃くなる。


②小麦デンプンは水と加熱によって膨潤(水分を含んで大きく膨らむ)します。膨潤したデンプンは焼成で容易に糊化します。糊化でん粉はパン生地が膨らむのを助け、焼成後の食感を良くし、保水性を高めます。

マイナス面:膨潤・糊化したでん粉は、グルテン膜を弱くし製パン性を低下させる。


③多加水と加熱によるグルテンの高分子化によってグルテンの進展性やガス保持力が増します。さらに、焼成後のパンの保水性を高めます。

マイナス面:生地が緩んでコシが弱くなる。ミキシング時間が長くなる。



60℃の湯種は糊や餅状にぼってりとはしておらず、少し粘性がありサラサラ流れます。まさに”ルー”


これを更に過加熱すると、、、


酵素失活
デンプン完全糊化
タンパク質変性
水分蒸発

生地のべたつき、ガス保持力低下、内相悪化(色、縞)、食感のねちゃつき、腰折れ、など製パン性に悪影響が出ます。


   ↓

『やわらか湯種(タンジョン)』は、

小麦粉の10~20%に3〜5倍量の水分を加えて60℃程度まで加熱し(一晩冷蔵熟成させる?)

のが簡便で効果も高いとされています。


こちらも湯種のお話です。合わせてどうぞ

パン作りのあれこれについてはこちらのリンク集で→パンやお菓子の原材料・製法・道具のまとめページ
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